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zoom RSS 坂東眞砂子「子猫殺し」のこと

<<   作成日時 : 2006/08/25 17:33   >>

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 「日本経済新聞」18日夕刊に載せた,坂東眞砂子さんのエッセー「子猫殺し」がちょっとした話題になっている。
 タヒチ在住の彼女は,飼い猫(雌,3匹)が産んだ子猫を,崖下に投げて殺しているというのだ。猫の生(性)を尊重するため避妊手術をしないかわりに,社会に対する責任を果たすために生れた子猫を殺しているのだという。そのために自分は,「殺しの痛み、悲しみも引き受けて」いると述べる。
 この結果,日経新聞社には抗議メール・電話が殺到し,動物愛護団体を中心に,坂東さんや日経に対する不買運動や批判が巻き起こっている。坂東さん,日経側は静観の構えである。

 僕自身も猫好きで,また90年代終わりごろから坂東作品を注目して読んできた読者なので,今回の騒動については,なんともいえない複雑な気分を味わっている。
 彼女の作品には,常識・タブーを超えてしまう主人公が多く登場する。それは創作上の必要から描くのではなく,彼女自身の人間認識の中に規範を超えてしまう人間の「業」というものを見つめる姿勢があるからなので,僕はそのような彼女を買っている。
 そして今回のエッセーは,坂東眞砂子という猫好き人間の「業」が表れた事態として,僕は受け止めている。
 論理的に考えれば,飼い猫の生を尊重するのであれば,子猫が野良猫になる可能性(生)もみとめてやらなければ片手落ちであるし,飼い主の社会的責任という点では,増え続ける猫を飼うか,飼い主を探せばいいだけの話で,それが無理というなら猫を飼わなければよいのである。殺す必然性は認められない。
 しかし,そのようなことが分からない坂東さんではない。雌猫3匹と暮らすことを守ろうとする坂東さんの「身勝手なこだわり」に,彼女の生き方が透視できる。そして,それを受け入れる受け入れないというのは,我々の自由なのである。
 結果的にいえば,非難したい人は非難すればよいという身も蓋もない言い方になってしまうのだが,坂東眞砂子という人を理解しようとする立場から批判するのではなく,ただ動物愛護の立場というような良識的発言だけでは,人間の魔性を文学に投影するこの作家にはなんら痛痒を与えることにはならないだろう。
 
 それはそうと,最近は事ある毎にクレームのメールや電話がすぐに当事者へと届けられるようだ。そうしてそこには,一つの「良識」派というものが形成されている。非難の矛先を向けられている相手は,たちまち排除される(最近のカメダ家のように)。
 そうすると,そもそもその起源において反社会性を売りにしている「小説」などという文学ジャンルは,たちまちに圧殺されることになりはしないだろうか。
 勿論「小説」はフィクションなんだから,という「良識」がある限り,「小説」や作家が抑圧されることはないだろう。それでも僕が心配するのは,「良識」「多数派」が社会に増殖する過程で,それらを相対化する視線やそのような視線の存在を許容する寛容さが社会から失われないかが心配なのである。
 坂東さんが,今回のエッセーで,何を意図していたのかは,あまり判然としない。
 しかし,僕はこの騒動を通じて,「良識」「多数」派と,それを常々相対化してきた「小説」・作家というものの関係,そして寛容さというものについて,ちょっと考えるところがあった。

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
やはり「片手落ち」は、まずいでしょう。日頃から人権意識のある、「平和主義者」のお偉い岡大の先生様がそのようなことを書かれては。そんなことでは「民主主義のなれの果て」になってしまいますよ。
タオルおじさん
2006/08/26 19:16
きむたくさんのご主張の眼目は後半にあると思います。そして、その懸念に深く共感します。坂東氏の作品は読んだことがありませんが、昨今の「良識」派の力には恐ろしいものがあります。
文学はそうした思考停止状態に対抗する力を持つべきものとしてこそ、存在意義があるのです。
oyasumiはこぶね
2006/08/27 02:04
 タオルおじさん、「ご注意」をありがとうございます。猫権も認めるべく「片手落ち」にならぬよう、文意を尽くしたつもりではありましたが、まだまだ不十分だったようですね。
 oyasukiはこぶね様、援護射撃のコメントをありがとうございました。
きむたく
2006/08/27 13:07
はじめまして。中国では猫を食べる地域があると聞きました。韓国の犬鍋はソウル五輪の時、確か話題になりましたね。個人的には犬鍋は一度食べてみたい。猫は寄生虫が多いといいますので、後が心配です。日本には「間引き」「姨捨」などの言葉がありますので、増えた子猫を始末することに罪悪感を持たない人がいてもおかしくはないと思います。現在、少子高齢化が問題となっていますが、少子化よりも高齢化のほうが深刻です。現代版の姨捨・間引きが必要になっているのかもしれません。坂東氏の記事は反応を計算した意図的なものとの見方もあります。政治家が本気で年金問題を解決しようとすれば、誰かが「姨捨」発言に走るかもしれません。猫と違って人間は票を持っていますから政治家も簡単には言わないでしょうけれど。猫を可愛がり、特に野良猫に餌を与えている方は、スーパーの牛・豚のパックの前で涙を流してから籠に放り込んでほしいものです。日本のスーパーで犬の肉や猫の肉のパックが並べば議論がさらに深まりますね。
とらのすけ。
2006/08/28 20:08
ばっかじゃないの!!
議論以前の問題。
君たちの子供を邪魔だからと崖から突き落として殺されたらどぉ?
いのち万歳
2006/08/31 11:41
私と友人は共に猫好きですが、諸事情からウチの猫に避妊手術をしたことを友人は「猫の寿命を縮めることになる。何故自然のままにしておかないのか」と激怒して責め、自分の猫が産んだ仔猫はどこかに捨てるか川に流すのだと言っていました。

自分が「善」だと信じるあまり、周りが見えなくなることがありますよね。
「善」に取り付かれた人たちが徒党を組むと、少しの反対の意見でも言おうものなら「悪」にされてしまいます。
とても恐ろしいことだと思います。

りんりん
2006/08/31 23:30
「善」とは、自分が善だと信じるから存在するのではなく、事実としてそこにあるものです。
人と関係して、というよりは、関係をさせられて生きる動物は、人の為に生きているのではなく、猫であるなら猫好きに好かれる為にいきているのではありません。
「生」そのものとして生きています。そして、
それは、基本的に誰の手をもってしても、
奪われてしまうことなく、生きているものです。
人が必要として一緒に生きてくれる事を願った時、動物は家族として、人と暮らすのです。
野良猫は人と暮らしたいから、ペットになるわけではありません。
人がそれを望むからなのです。

もも
2006/09/03 18:05
続きです。
地域社会が、盛りのついた猫の声を受け入れられないのなら、その地域に猫の暮らす場所はありません。猫からすれば、去勢避妊は大迷惑。
我関せずの問題なのです。
しかし、猫と暮らしたい、社会にも迷惑をかけられない、人に都合の良い折衷案として、去勢避妊が行われているのです。(去勢避妊を全面的に
支持する気持ちはありません)

坂東さんの身勝手な子猫殺しを受け入れる、受いれないを決めるのは、我々ではない。
殺された子猫が、もの言えぬ口で、魂で、
自分の命を一方的に奪う者に何を訴えるのか。
良識で判断するのではない。
善を振りかざして判断するものでもない。

概念の生と、現実の生を混同して
子供の駄々のように悲観的に論じているなんて
頭でっかちすぎます。




もも
2006/09/03 18:06
興味深い視点だと思います。
多数派、良識派、必ずしも正しいとは限りませんよね。

ただ、この作家の場合、自分の生き方、考え方を動物に当てはめて考えているところが異常です。動物は決して人間と同じような考え方では生きていない。ある犬のトレーナーは犬は「考えない」と断言しています。生みたいと考える人間。生む行為がメカニズムになっている動物。殺された子猫、また、この作家は飼い犬の生んだ子犬も見殺しにしていますが、それらすべての屍骸がこの作家の人間性を表していると思います。

エゴです。狂っています。
ロザッティ
2006/09/07 02:02
現実と小説の境がわからなくなっているのは
坂東さんの方なんじゃないかと思った記事ですね
普通あのような理由で生まれたばかりの子猫を
殺す人間は「きちがい」というと思うのですが?
子猫を殺すと同時に自分も殺されている。
何ていうのなら死んでしまえばいいのに、自分が・・・
と思いましたけどね
通りすがり
2006/09/22 16:14
直木賞作家がどんな論理を展開して人に納得させようとも「猫殺し」はタブーに決まってるだ
ろ!猫殺しがしょうがない理由なんか無い!
いかんものはいかん!こんなやつの本なんか
絶対読まない!
くまとら
2006/09/22 17:16
坂東さんも自分の異常さを才能と錯覚しているのではありませんか。人間を含めたすべての生き物が、無情に耐えて生き抜いている現世において、あなたが偉そうに、また感傷的に美談として語る神経は正常ではありません。至急最寄の○○病院に行って下さい。このような人の話題はもういらない。
どうも
2006/09/22 17:18
坂東眞砂子「子猫殺し」のこと 「きむたく」日記@AREA SOSEKI/BIGLOBEウェブリブログ
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